【山行形態】 夏山 (縦走)
【日 時】 2012年9月上旬 (一泊二日)
【場 所】 北海道 大雪山 (トムラウシ~旭岳)
【内 容】
先日機会を得て、”表大雪”の縦走を行った。主な目的は、山小屋・トイレ事情と、登山道の荒廃・整備状況の把握で、トムラウシ温泉から旭岳姿見の池まで、途中ヒサゴ沼避難小屋泊の一泊二日の山行となった。(当初、ヒサゴ沼避難小屋と白雲岳避難小屋でキャンプの予定であったが、三日目の天候不良が予想されたため、二日目は急遽行程を変更。結果、ヒサゴ沼から11時間50分の行動で旭岳姿見の池までなんとかたどり着き、終発30分前の17:00のロープーウェーで下山した。)
季節的には、花の時期には遅く、紅葉にはまだ少し早い、はざかいの時期であったが、秋晴れの下、登山者の少ない静かな山域を駆け抜け、大雪山の雄大な景色を十分に堪能した。
※ 詳細・写真は”続きを読む”をクリック。
【行 程】
<一日目>
トムラウシ短縮路登山口5:10→6:28カムイ天上6:35→7:53コマドリ沢分岐8:17→9:05前トム平→11:10トムラウシ(2141m)12:00→12:20北沼12:30→14:30ヒサゴ沼水場(水汲・浄水)15:00→15:10ヒサゴ沼避難小屋前キャンプ指定地(1650m付近)
<二日目>
ヒサゴ沼避難小屋前キャンプ指定地5:00→5:55化雲岳(1954)5:58→6:45五色岳(1868m)6:52→7:18忠別小屋分岐→7:33忠別小屋7:37→7:54忠別小屋分岐7:58→8:45忠別岳(1962m)→9:18忠別沼→10:53高根ヶ原分岐11:00→11:49白雲岳避難小屋12:06→13:28北海岳(2149m)13:38→14:17間宮岳(2185m)14:22→15:15旭岳(2290m)15:27→16:50旭岳姿見の池ロープウェー駅
【山小屋・キャンプ指定地の現況】
今回、確認した避難小屋は、ヒサゴ沼避難小屋、忠別避難小屋、白雲岳避難小屋、旭岳避難小屋4個所。このうち、旭岳は宿泊施設ではなく避難のための施設との位置づけでトイレはなく携帯トイレブースのみ 。そのほかの3個所の避難小屋はいずれも汲み取り式のトイレとなっている。このほかに、キャンプ指定地を2個所も確認したが、南沼キャンプ指定地には携帯トイレブースが設置されている。裏旭キャンプ指定地には現在は携帯トイレブースはない。
なお、今回の起点となったトムラウシ温泉の短絡コースの駐車場には、ソーラーで電気を確保したバイオトイレが設置されていた。
前にも報告した通り大雪山では、十年来のとりくみはあるものの、現時点で携帯トイレは必ずしも十分定着・普及しているとはいいがたい。原因について入山ルートが多い、登山者の層が幅広い、回収のための環境整備が必ずしも整っていないなど、様々な要因が考えられるが、その中の一つに、大雪山は普及の進んでいる利尻山、早池峰山などと異なり、二泊以上を有する”縦走利用”が重要な利用形態となっており、使用後の携帯トイレを長時間携帯しなけなければならないことが、携帯トイレの使用の普及を妨げているのではとの指摘もある。また、このような利用形態であることから、現時点では縦走に利用される山稜部の避難小屋には、基本的(美瑛富士避難等一部を除く)には、トイレが併設されていることから、避難小屋または併設のキャンプ指定地を利用する限り携帯トイレの利用の必要性は少ないことも、結果的に携帯トイレの使用が広がらない原因の一つになっていると思われる。
しかし、避難小屋併設でないキャンプ指定地はトイレはなく、携帯トイレなどを持参しないと解決できないし、行動中のトイレ利用を考えればいずれにしろ、携帯トイレの帯同は不可欠とおもわれる。事実、そのようなトイレのない野営指定地では、現在でも、一部に何の配慮もされない野外でのトイレ利用が継続されており、大きな問題となっている。
( 当方、この山行の後、山のトイレを考える会の一斉行動として実施された”美瑛富士避難小屋”周辺の清掃に参加・同行したが、この美瑛富士避難小屋はトイレがなく、周辺には何の配慮もされない野外でのトイレ利用によるトイレ跡が二十箇所、近く確認され、清掃登山ではちり紙等を回収した。)
また、避難小屋の既設トイレの汲み取りについては、ヘリコプターでのし尿の回収・運搬となることから、これらが現在管理者の大きな負担となっており、これら負担の軽減と効率的な管理が課題となっている。このようなこともあり、携帯トイレの普及などを行っている”山のトイレを考える会”は、既設トイレにおいて回収するし尿の減量と回収時の作業の軽減のため、トイレ利用の際の紙の持ち帰りも呼びかけている。
なお 今回確認した山小屋のうち、旭岳避難小屋を除く3個所の避難小屋はいずれも設置から長年が経過し老朽化しており、一部の小屋では建て替えを望む声もでている。
また、山小屋の利用のマナーも課題となっており、各山小屋には管理者により、”先乗りによる場所取りの禁止”など各種マナーの周知の張り紙がなされていた。ツアー登山が増える中で、本来の”避難のための場所”である避難小屋が”簡易に泊まれる場所”としてあらかじめ織り込まれる宿泊施設化が問題となっており、ピーク時には、特定のツアー会社が先乗りし大面積(空間)を占有し、一般の利用者が利用できないなど各種問題が発生しているとのこと。マナーの問題は、登山者、ツアー会社等の各自の意識にかかわるだけに、その解決には様々な主体の理解と工夫、努力が必要な問題と思われる。(旭岳避難小屋は、”宿泊施設ではない”と明記しており、床もコンクリートの打はなしとなっている。)
大雪山は、日高などと異なり、縦走路に加え各方面からのルートが入り、これらがエスケープルートとしても活用できることから、距離は長いものの縦走は比較的取り組みやすい。このような中、それをささえる、避難小屋・キャンプ指定地、トイレの問題をどのように考え・取り組んでいくかが大きな課題と思われる。
【参考】
○大雪山国立公園連絡協議会HP
大雪山国立公園に関する様々な情報が提供されている。
避難小屋・キャンプ指定地情報
http://www.daisetsuzan.or.jp/daisetsu/yobi3.htm
大雪山トイレマップ
http://www.yamatoilet.jp/mtclean/toiletlist/daisetsu_map2007.pdf
※ 「北の国から”シロクマのtokidoki通信”」は、2012年7月に北海道に住むこととなったⅠ江が、会の皆さんに忘れられないよう北海道の山やスキー、自然の情報を不定期に発信しすることを目的に、”季節時々(tokidoki)の北海道の情報”を、”ときどき(tokidoki)”、載せていく”予定”のこのブログ上のバャーチャル(仮想)の通信です。 (2012年7月16日創刊)
【フォトギャラリー】
<一日目>
<二日目>
コメントをお書きください
M森 (日曜日, 16 9月 2012 17:47)
一泊二日とはすごいペースですね。20年近く前、カミさんとクワウンナイ川を登った際は、トムラウシから白雲岳まで1日で行きましたが結構な時間が掛かりました。携帯トイレ、利尻で5ケも買いましたが私はまだ使っていません。
shirokuma (火曜日, 25 9月 2012 12:57)
携帯トイレの購入ありがとございます。
話を聞くと、ツアーなどでも使用頻度を考え、登山人数フルではなく少し少なめに用意する例も多いようです。
せっかくですので、お近くの山でもご持参ください。
回収ボックスは無くても、家まで持ち帰り中身をトイレに流し、その他の部分をゴミに出せば大丈夫だそうです。ちなみに早池峰では、携帯トイレは基本家まで持って帰ってもらうよう呼びかけています。