北の国から”シロクマのtokidoki通信”No.29【苔の回廊 寿都幌別川偵察】

【山行形態】 沢登り

【日  時】 2013年8月3日(土)

【場  所】 北海道  寿都幌別川

【メンバー】 A元(会友)、I江 +他会メンバー3人 計5名   ※Lは他会メンバー  計画書は他会にて提出

【天  候】 晴れ

【行動概要】

 暑さが続くなか、北海道から涼しげな沢の話題を一つ。

 札幌で所属している会で、最近ゴルジュ・函のある沢の話題がたびたび出る。I江も興味津々で聞いていたが、その中のひとつに、深い苔むした函が続き”苔の洞門に水を流したような沢”とも評される”寿都幌別川”がある。この川は積丹半島の付け根当たりにあり、標高は高くはないが、詰めを除きそのほとんどが函の中を行くという特徴的な沢だ。本来は沢を詰めるには沢内で一泊を要すところだが、まずは、日帰りで行けるところまで偵察山行に行こうということとなった。
 朝五時に札幌を出発し寿都に向かう。三時間半ほどかかり寿都幌別川の河口付近に到着。川沿いの林道入り口付近に駐車をし出発準備をする。林道を利用しまずは一の沢出会いまで進み、ここから入渓。水は思ったほど冷たくない。最初は比較的広い河原を進むがだんだん狭くなってくる。時々、滝や釜、ゴルジュ状の場所も出てくるが、へつったり巻いたりしながら順調に進む。一時間ほど進んだ、c115m付近で川の中にすくっと立つ橋脚跡に出会う。記録では見ていたが実際見てみるとなかなか不思議な光景だ。この後も同様の渓況であるが二つほど釜付の滝を超えると二の沢出合につく。二の沢は水量はそれなりにあるものの細い。少し進むと岩に挟まった木でダム上になった個所があり上流側が湛水していた。深さもあることから泳ぐこととなり、まずはI江がためしに泳いでみる。あとは次々続き、難なく全員通過となる。このあたりから両側も迫り側壁をへつりながら進むと前方に切り立った緑の崖に挟まれた函が見えてきた。

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 ここからが今日の偵察山行の核心となる。函手前の小滝は釜付でここも思い切って飛び込み、左岸を水中をへつり滝に取りついた。そこから始まる緑の苔に覆われた函は不思議な空間であった。初遡行の記録ではこのあたりからしばらくは高巻となっていたが、その後の記録ではそのまま進んでいる。今回は水量も多くないのでそのまま進むこととする。この後は狭い函の中を、へつったり、水流の中を進んだりして超えていく。しばらく進むと先に少し明るい場所が見えてきた。たどり着くとそこは、右岸、左岸側とも相変わらず切り立ってはいるが、巨岩が点在する少し広がりのある場所であった。ここでちょうど計画上行動限界としていた13時となり、ここを本日の終了点とすることとした。位置的には、三の沢出合の少し手前、c210m付近であった。思い思いに昼食をとり、少しゆっくりすることとするが、ここまで、泳ぎ、腰までつかったへつりなど、ずいぶん水中にいたので、A元さんの震えが止まらない。薪を集め小ぶりのたき火を起こし暖を取った。一時間ほどたき火の周りでゆっくり休息したあと、14時に元来た函を戻リ始めた。帰りはA元さんは雨具の上着を身に着け寒さ対策を講じた。帰りも、場所によっては腰まで水につかりながらどんどん進む。登りは無我夢中で登っていたが、下りで改めて見ると苔に覆われた狭い函はなかなかの雰囲気があってとても素敵である。函の出口の釜を泳ぎ抜けると谷は少し明るくなった。この後も泳ぎや長いへつり等もあり気が抜けない。例の橋脚跡まで来るとだいぶ戻ってきた感があり、この下は川も少し広くなりいくつか滝をまいたりして進み一の沢の出会いまで到着。無事遡行終了。行きも帰り渓流内は約三時間半であった。最後に林道を三十分もどり車に到着、山行は終了した。 今回の山行は偵察・下見の目的のほかに、泳ぎを伴う川の遡行を体験してみるということも目的としていた。そういう点では泳ぎや水中でのへつり等を体験することができ良かった。また、併せて今回の体験で、泳ぎを伴うなど長く水に体をさらす場合については、衣類を含む、体温保持への配慮が重要であることを改めて実感した。A元さんは前半の終了時には、がたがた震えが出るなど低体温となっていたが、I江は沢用のはっ水・保温性の高い衣類を身に着けていたがなかなか調子がよく、登り・下りを通じ終始ほとんど寒さを感じることがなかった。A元さんたちが後半雨具を身に着けたがこのやり方は結構効果的であったと思われる。

 個人的には、今回、噂通り、苔の洞門に水を流したような苔むした函の独特の景色を体感することができたこと、加えて、泳ぎあり、函の中のへつりなどこれまでに無い体験をすることができとても楽しく、有意義であった。今回は前半部分だけであったが、今日の到達地点以降が本来の核心部とのこと、この谷にはもう一度来て最後まで詰めてみたい。          

【行  程】 5:00札幌発→8:25寿都幌別川取り付き林道入り口付近P 8:55→9:30一の沢出合(c70)9:45→10:45橋脚(c130)10:50→11:35二の沢出合(c160)→13:00三の沢手前(c210)14:00→15:00二の沢出合(c160)→17:15一の沢出合(c70)17:28→17:58寿都幌別川取り付き林道入り口付近P →札幌へ
【フォトギャラリー】
狭い函を戻ってきてほっとするメンバー
狭い函を戻ってきてほっとするメンバー

※「北の国から”シロクマのtokidoki通信”」は、2012年7月に北海道に住むこととなったⅠ江が、会の皆さんに忘れられないよう北海道の山やスキー、自然の情報を不定期に発信しすることを目的に、”季節時々(tokidoki)の北海道の情報”を、”ときどき(tokidoki)”、載せていく”予定”のこのブログ上のバャーチャル(仮想)の通信です。 (2012年7月16日創刊)

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