北の国から”シロクマのtokidoki通信”No.30【クワウンナイ川 遡行】

クワウンナイ川”滝の瀬十三丁”
クワウンナイ川”滝の瀬十三丁”

【山行形態】 沢登り

【日  時】 2012年8月中旬(二泊三日)
【場  所】 北海道 大雪山山系 クワウンナイ川(忠別川支流) 

【内  容】

 前回に引き続き沢の話題を一つ。

TSMC内でも8月末に計画されている大雪山クワウンナイ川に、機会を得て入ってきたので、クワウンナイ川の入渓手続き等最近の状況を含めご紹介する。

 クワウンナイ川は”滝の瀬十三丁”と称される滑滝など渓流の美しさが有名で多くの入渓者が絶えないが、流域も広いこととと川の形状などから悪天時には一気に状況が変化すること、また、入渓者とのミスマッチ(名前にひかれた沢未経験者の入渓など)などから事故も多く、1987年から2004年に条件付き解禁とされるまでの17年間、林野庁森林管理署により入渓が禁止されていた。本来、沢などのバリエーションルートは自己責任を前提に特段の制限はされないことが多いが、クワウンナイ川については現在でも入渓にあたって森林管理署へあらかじめ手続きをすることを含めルールの遵守が求められている。具体的には、森林管理署により【遵守事項】【留意事項】【入渓マナー等】と細かなルールの指導がされている。(詳細は下記 北海道森林管理局HP参照)

  http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/kamikawacyubu/nyuukeitetuzuki.html

※今回の山行もこの手続きを取っての入渓となった。(事前に上川中部森林管理署入林承認申請書を出して、入林承認証を受け取ることが必要。併せて、道警への登山計画書も提出)

 今回の計画は当初8月初めに予定していたが、今年は残雪も多く例年より水量が多いのではないかと考え8月半ばに延期したもの。しかしながら、このところ北海道の天気予報はくるくる変わり判断がしにくい。直前まで3日間晴れもしくは曇りの予報であったが、前日夜の予報で曇り一時少雨の予報となった。加えて前日を含め天候が不安定な状況であったことから、まずは現地入りし、平水時より大幅に増水しているようなら引き返すことを前提に入山した。幸い、朝の天気予報では良いほうに変わってきており、ポンクワン沢出合まで入ってみると水量は少しは多いかなと思うもののほぼ平水で、クワウンナイ川の水は濁っていなかったことからそのまま入渓した。

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 初日の宿泊予定地の”カウン沢の出合”までは、1箇所ゴルジュの高巻があるが、ほとんどがゴーロ歩きとなり渡渉を繰り返しながら沢の中を進む。やはり水量は少し多めか、渡渉では場所によっては股を超える個所もあり慎重に進む。ツェルトの支柱も兼ねて持参したトレッキングポールを一本ずつ持ち渡渉の際の補助に使ったがなかなか安定感があり効果的だった。渡渉を繰り返し順調に出合手前まで進んだがここで、渡渉の際ひざをひねるアクシデントがあり、この後はスピードダウン、とりあえず泊地となる”カウン沢の出合”に13時40分頃到着。約7時間半のゴーロ歩きはなかなか長かった。(アクシデントによる30分ほどロスを含む)

この区間は、渡渉も多いので所要時間はその時の水量に大きく影響されると思われる。

”カウン沢の出会”は、森林管理署指定の泊地(なお、緊急避難等の場合はこの限りでない。)で、河床より一段上がった林の中にあり、約5張りほど晴れるスペースがある。なお、この日の別パーティー同行者は、一組二人だけであった。

 二日目、今日は”滝の瀬十三丁”を含むこの沢のメインの区間に入る。今回の山行の目的の一つに、利用状況の確認があるので、指定地(カウン沢出合)以外の野営状況やゴミ等の管理状況、巻き道の状況などを確認しながら進む。魚止の滝(左岸を巻く)、その次のF2(今回は左岸を巻いたが、右岸も巻ける。他の記録ではこちらのほうが多い)、そして、いよいよ滑滝が出てきた。”滝の瀬十三丁”の始まりだ。なるほど噂通りのすばらしい滑滝が続く。多くの人を魅了し引きつけることもよくわかる魅力的な場所だ。滑滝は何段かに分かれ続く。途中、左岸から滝を持つ沢が入り本流が屈曲する場所(奥二股?)手前にスノーブリッジが残っていた。この屈曲部を左に取り本流にかかる滝を右岸から乗り越え暫く進みもう一度右に曲がりしばらく進むと滑が切れる。さらに進むと”ハングの滝”が出てくる。この滝は名前の通りハングした岸壁から落ちる滝と大きな釜を持つ立派な滝だ。高巻きは滝の少し手前の右岸ガレ場を一段上がり、残置ロープのある少し立った岩の箇所を乗り越えれば滝の落ち口につながる巻き道がある。なお、ロープに取り付くまでの下部のガレ場結構荒れているので、集団で行動する際には落石等に注意する必要がある。ハングの滝の上にででさらに進むとそれぞれに立派な滝の掛かった二股(上の二股?)に出る。ここは左股を行くこととなるが、左俣の左岸(左右の滝の中間から取り付く)から巻ける。この二股の滝を超えると沢も穏やかになってくる。小滝を超えながら進むとどっしりとした”すだれの滝”が見えてくる、滝を見ながら右岸を進む。大きな滝はこれで終了。このあたりから花が多くなってくる。階段状の滝等を右手に花を眺めながら進むと、いよいよ源流ぼくなってくる。後は稜線に向け詰めていくだけだが、ここからも意外と長い。雪渓を2箇所ほど超え、咲き乱れる風衝の高山植物を鑑賞しつつ、はっきりついた踏み跡をたどると、トムラウシ~化雲岳間の縦走路に当たる。暫く縦走路を進み分岐で縦走路から別れヒサゴ沼に向かい、ヒサゴ沼避難小屋に16時15分到着。この時点で、テント場も盛況で12~3張りのテントが既に張られていた。避難小屋は一階は既に満員、二階は三分の一ほど埋まっていた。(後に二階も満員になる。小屋内は総勢20名程度か)今年は雪も多く、小屋寄りの雪渓もまだしっかり残っており、雪渓下部から水を取ることが出来た。小屋は混雑してはいたが比較的きれいに使われている。テントは小振りのものが多く昨今の個テントブームの影響を感じさせる。 行程的には、初日に膝を痛めたので少しゆっくりペースとなったが、それなりの時間で到着することが出来た。夜半から朝方にかけ雨が降ったが小屋泊まりのため快適に過ごすことが出来た。

滝の瀬十三丁を行く。
滝の瀬十三丁を行く。
マイ ベスト”滝の瀬十三丁” ポイント
マイ ベスト”滝の瀬十三丁” ポイント

 三日目、早立ちの用意をする者も多く4時にはみんな起きて作業を始めていた。 あいにくの雨模様のため、出発タイミングを計っているものも多くいたが、そのうち雨も上がりガスとなったので6時頃には多くの者が出発していった。当方は下山のみのため慌てる必要は無いものの、天人峡へのルートは長丁場の下山コースであることから、6時過ぎに出発、化雲岳に向け歩き始める。設置された階段状の木製品が浮かび上がっていて歩きにくい場所もある。化雲岳からはひたすら下山することとなる。雨で滑りやすくなった登山道を慎重に進む。途中、ずいぶん洗掘の進んだ箇所もある。特に第二公園手前から第二公園あたりは、歩道が川状になっていた。第一公園まで来ると木道も出てきて、ペースも上がる。ここまで来れば、山稜部の天候の影響も受けにくくなり一安心。ここからでも天人峡まではあと2時間半はかかる。黙々と歩くと滝見台に付く。対岸に見える”羽衣の滝”はさすがに立派だ。少し進んで三十三曲がりのつづら折りを降りきると天人峡に到着。出発時に車をおいたクワンナイ川横の駐車場まで戻り終了した。天候も3日間行動中は雨に降られることもなく過ごすことができた。また、2日目以降は膝を痛めた状況なのでペースダウンしたままではあったが、最終日、大きく遅れることなく何とか順調に降りてくることが出来たのはよかった。

 クワウンナイ川は、噂に違わず、”滝の瀬十三丁”などのすばらしい滑滝や滝があり、独特の雰囲気と景観を有する沢であった。これまで多くの人を引きつけてきたことも十分理解できる。 一方技術的には、現在は主要な滝など要所要所に巻き道もあり、飛び抜けた技術を要する沢ではないが、沢中の泊を要する長丁場の沢であり、集水域も広く天候次第で急激な状況変化が予想されるなど、天候判断を含めた、総合力を要する沢だと思う。このような観点も含め<多様で多くの人が入渓するこのクワウンナイ川について、森林管理署が特別にクワウンナイ川遡行の取り扱いを定めているものと思われる。本来バリエーションルートである沢登りに関し個別の入山(入渓)ルールのあることには様々な意見があるものと思われるが、魅力に惹かれ多くの人々が訪れるこの沢においては、注意喚起の面で一定の役割は果たしているのではないか思うところ・・・・・。 また、今回、たき火跡の不始末や排泄物の放置などマナーの面が問われる状況も散見された、これは仮に”ルール”がなくとも、自然性が高い沢などの地域においては、自分が心地よいと感じたその雰囲気を、そのまま次の人にも感じてもらえるように、入渓による人為の痕跡を少なくするような配慮は”マナー”として入渓者共通のものであってほしい・・・・と個人的には思うところ。

【行 程】

<1日目>

6:15クワンナイ川林道入り口駐車場→6:40ポンクワンナイ川出合→10:05(c783付近)10:15→13:40カウン沢出合(二股)(テント泊)

※ カウン沢出合手前でひざを捻るアクシデントあり、30分ほどロス、以降スピードダウン。

<2日目>

5:35カウン沢出合→6:55魚止の滝→7:15F2→8:05(c1270付近屈曲地点)→9:20ハングの滝(c1310 ※順番待ちあり)→10:10ハングの滝上→10:5上二股(c1370付近)→11:45すだれの滝(c1490)12:05→13:15雪渓(c1660付近)13:20→14:20稜線→→14:45天沼14:55→16:15ヒサゴ沼避難小屋(小屋泊)

<3日目>

6:10ヒサゴ沼避難小屋→7:30化雲(c1954)岳→8:40ボン沼8:50→11:20第一公園(c1360付近)11:35→13:00滝見台(c919)13:10→13:50天人峡登山口13:55→14:10クワンナイ川林道入り口駐車場

 

※ 2日目以降は、傷んだ右膝をテーピングテープとサポーターで固めほとんど曲げられない状況での歩行となりスローペースであることから、区間ごとの所要時間はあまり参考にならない。

【参考】

※入渓禁止から、一部解除までの経緯がまとめられています。

http://www.jwaf.jp/magazine/backnumber/2004/0406-3.html

※「北の国から”シロクマのtokidoki通信”」は、2012年7月に北海道に住むこととなったⅠ江が、会の皆さんに忘れられないよう北海道の山やスキー、自然の情報を不定期に発信しすることを目的に、”季節時々(tokidoki)の北海道の情報”を、”ときどき(tokidoki)”、載せていく”予定”のこのブログ上のバャーチャル(仮想)の通信です。 (2012年7月16日創刊)

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